【第5話】桐壺、広告文に磨きをかけます。


暗たんとした空から大粒の雨が叩き付けるように降り始めた。桐壺が駆け足でエントランスに入ると同時に湿り気を含んだ冷たい風が一緒に流れ込んできた。強い風にあおられ、雨粒が行き交う人々を濡らしていた。

「ふぅ・・・。本格的に降る前に着いて良かったです。」

一息をついた桐壺はホッとした余裕から思考を巡らせた。

(しかし、天気予報の精度は相変わらず高いですね・・・。尊敬します。私も負けじと精度を高めなくては!)

床を必要以上に濡らさないよう、桐壺は丁寧に傘を畳む。傘袋に手を伸ばしたところで見知った人物を見つけた。

黒田「やぁ、桐壺ちゃん。どうだい?元気にしているか?」

「黒田社長!及川さんもおはようございます。」
「ああ、おはよう桐壺。今日は早いな。」
「はい。私、雨はあまり得意ではないので土砂降りになる前に出勤しようかと・・・。」

黒田「ああ、なるほどね。確かに桐壺ちゃんはそうだろうな~。俺達は社用車を使うからさ。こういう日は車での移動は気が楽だよ。」

そう話す黒田の後方で及川がスマホで社用車の手配をしていた。そう間もなく運転手が車を回してくるだろう。

「そうですね。さすがにこの雨ですと傘を差しても濡れてしまいます。お車ならば安心ですね。」

黒田「ああ、そうだな。・・・ところで桐壺ちゃん。もう会社には慣れてきた頃かな?」

「はい!おかげさまで皆さんとも仲良くやれてきているような気がします。気のせい・・・、でなければいいのですが。」

その台詞を聞いた黒田は微苦笑した。

黒田「そこまで気が回るならメンバーとの仲は大丈夫だろう。業務の方はどうだ?」

「はい。最初こそ戸惑いはしましたが、皆さんと仕事をしていくうちに慣れてきました。」

黒田「そうか。それはよかった。引き留めてすまなかった。残りの期間も頑張ってくれ!」

「はい!精一杯頑張ります。それでは失礼します。」

桐壺は一礼すると仕事場へ向かっていった。その背を見送った黒田が及川に確認するように言った。

黒田「・・・及川、テストは8割方完了して、もう最終チェック段階だったな。」

「はい。本日の訪問はその最終日程の調整になります。」

黒田「そうか。早いものだな。・・・テストが完了次第彼女はここを去ることになる。せめてその時までは何事もなければいいのだがな。」

「ええ。俺もそう思います。彼女が来てから、社内の雰囲気が少し明るくなった気がしますから。」

二人はしばしの沈黙の後、玄関口に向かって歩き出した。そこにはちょうど会社前につけた社用車が待っていた。



CPAの方が大事ですよ。」
「いいえ、CTR重視でいくべきよ。」

01

(朝からずっとこの調子ですね・・・。)

――昼休みを挟んでもコンサルタントの二人の議論がまとまる事はなかった。午前中、打ち合わせをしようということで二人は商談用の広いテーブルを使って話し合っていた。はじめは特に声を荒らげることもなかったが、何がきっかけかは分からないが次第にヒートアップしだし、ついにはお互いの資料を指差しながら「ああでもないこうでもない」と、激しく意見をぶつけ合うようになった。

「今井さんは広告がツリ気味・・・、いやツリ過ぎなんですよ!『どこよりも高額キャッシュバック』とか駄目ですよ。しかも『他店よりもプラス1円保証』って、ユーザーのメリットでそこじゃないんじゃないですか??」

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「もちろん、それ以外の訴求もLPでちゃんとしてるわよ。青木君の広告はどうなの?『おいしい水はクレリオ』って、ひねりがなさ過ぎるというか、他社との違いがまったく分からないじゃない。」

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「でもそれは事実じゃないですか。今井さんのは一歩間違えれば虚偽ですよ。」
「そこはちゃんと上手くやってるわよ。プロですから!」

コンサルタント二人の議論は過熱し、平行線を辿る一方。その様子を不安そうに眺める桐壺。そこに隣で作業中の高橋が小声で話しかけた。

「桐壺ちゃん、ちょっとあの二人にコーヒーでも飲ませてついでに話聞いてきたらどうだ?どうにもヒートアップしすぎて、言いたいこと言い合ってるだけだろう。」
「そうですね。そうしてみます。」

桐壺はそろっと立ち上がり、アイスコーヒー二つを手に今井と青木のもとへと歩み寄っていった。タイミングを計って声を掛ける。

「――お疲れさまです。少し休憩をいれたらいかがですか?」

その声に今井と青木が振り返った。桐壺の姿を認めると二人ははっとした表情を見せた。第三者の登場に少し冷静になったのか、コーヒーを受け取りながら大声で会話していたことを謝罪した。

「コーヒーありがとう。申し訳ないわね・・・。」
「すみません。僕達うるさかったですよね?」
「そうですね・・・客観的に見ればいつもより声が大きかったと思います。ですがそれは、今井さんと青木さんがより良いリスティング運用のために真面目に話している証拠だと思いますよ。」

桐壺の言葉に頷く二人。

「ええ、その通り。大真面目よ。だから今回は言いたいことを言わせてる貰っている訳。」
「僕もです。決して半端にやってなんかいません。」
(こ、これは、どう対応したらいいものでしょうか・・・。)

二人はお互いを睨みながらコーヒーをすする。しかしカップから口を離したと思えば、すぐさま議論が再開してしまう。桐壺はどうすることもできず、今井と青木の間で途方にくれるのであった。

「――そうよ。桐壺さんにこのレポートを分析してもらえばいいのよ。」
「・・・は、はい?」

今井の突然の提案に桐壺は状況が上手く飲み込めずにいたが、青木は理解したようだった。

「ああ、いいですね。第三者の目を入れた方が手っ取り早いですね。ま、僕の方が第三者に判断して貰えばより優れているとはっきり分かるでしょうけどね!」

今井と青木は我が意を得たりと言った顔をして桐壺を見た。その視線を受けて桐壺は少し考えた風な間の後、表情を明るくした。

「――あっ、なるほど。そういった事ですか。解りました。私でよろしければ見させていただきます。」

二人は桐壺の了承を受けると、それぞれの方針が書かれた書類を渡した。桐壺はパラパラとレポートをめくり、高速で内容を把握する。

「お二人の受け持っているクライアントはプロバイダウォーターサーバーの会社なんですね。」
「ええ。どっちも難しい業種よ。競合先が多い割にさほどサービスに差が無いからやりづらいのよ。基本的には目標CPAをクリアすることなんだけど、そのアプローチ方法にはいくつかあるの。」
「全体的に見て、どちらのアカウントもクリック率が比較的高いですね。」
「それはそうでしょう。たとえば今やネットは現代人の必需品だし、使うのなら快適なものを選びたいのは当然です。僕はゲーマーですから回線速度にはこだわってますよ。ラグでイライラしたくないですし。水も同じで、水道水を飲むより選べるのなら天然水やピュアウォーターの方が良いでしょう?それも同じですよ。」
「私も健康を気にして水道水より、ミネラルウォーター選んじゃうのよね。」
(どちらもユーザーの生活の質を上げる商品・・・。ユーザーに求められているものなんですね。)
「今井さん、青木さん。過去から現在までのこちらのアカウントの数値を集計・分析してみてもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。私も青木君も今の方針に変えたのは一週間前だから、過去にさかのぼって分析して貰えるとわかりやすいかしら。」
「了解しました。20分程お時間頂きます。」

そう言って桐壺は隣の部屋に移動し、テーブル中央に座った。ノートパソコンを起動し、ユーザーパスワードを入力。そして――。

「『artificial intelligence KIRITSUBO』オン!」

AI桐壺ON

自身の眼鏡に触れると同時に部屋は青白い光に包まれた。桐壺の周囲にディスプレイやキーボードが浮かび上がり、桐壺が把握している情報が表示される。

「システム正常。これより、アカウントの集計を行います。集計の結果を基に今井方針、青木方針の成果を確認します。」
「・・・まずは両名の方針確認。今井さんはCTRを重視し、品質スコアを上げる方針。そうすればクリック単価も下がりますし、結果としてCPAも安くなりますね。青木さんは獲得単価重視。あまりABテストの頻度は多くないようです。」



「どちらも昨対比でCPAがやや悪化しているようです。LPをテキストマイニングし、その要因を分析します・・・。10秒以内にチェック完了予定です。」

エメラルドグリーンに輝く桐壺の瞳に無数の文字列が映り、異的なスピードでそれらが流れていく・・・。

今井の広告文:

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「今井さんはCTRを重視ししすぎているため、ユーザーニーズとクライアントの強みのマッチングが不十分です。結果、CVRが伴っておらず、CPA悪化に繋がっていると思われます。」

青木の広告文:

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料理がもっとおいしくなる
プロが選ぶウォーターサーバーNo1

 

「青木さんはクライアントの意見を忠実に反映しすぎたようですね。どの広告も控えめで目立たないために、過去の運用実績をみるとほんど広告文を変えておらず、品質スコアも上がっていません。そのために結局CPAが高騰しています。」
「結論としてはどちらも間違いではありません。ただ、CTRとCPAは切り離して考えるのでは無く同時に考える必要があるようです。」
両方の方針を反映した広告文を生成します。」



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桐壺は分析結果と広告文をプリントアウトし、今井と青木のもとへ報告に向かった。



「――と言うことでして、今井さんも青木さんどちらも正しく両方大事です。」
「そうだったのね。CTRを重視するという方針自体は問題なかったけれど、それだけにこだわりすぎてクライアントの本当の強みをしっかりと捉え切れていなかったのね。」
「僕も一度目標CPAを超えてしまうとそれから広告文を大きく変更することに抵抗を感じてしまって。結局どの広告も似た結果になってしまっていたので、それならばと今井さんに聞いてここは勉強すべきでした。」
「いいじゃない。クライアントとの話を重視する・・・。すばらしいわ。思うように結果が出ず、私はつい自分の技量でなんとかしようと大切なことを蔑ろにしてしまっていたのね。・・・なんだか悪かったわね、青木君。大人気なくて。」
「いいえ。僕の方こそむきになってしまっていたみたいで。」
「今井さんも青木さんもとても優秀です。ですので、お互いをフォローしながら作業に当たれば今以上の成果がでると断言できます!良いパートナーになれると思います。」
「・・・。」
「良いパートナーねぇ・・・。」
「今井さん、なんですかその目・・・。」
「べ、別になんでもないわよ・・・!それで、青木君。今日空いてたりしないかしら?この件で根詰めてたし、気晴らしにご飯一緒にどう?」
「ああ、それ僕も聞こうと思っていたんです。たまには部下が払いますのでどうですか?妹に美味しいお店を勧められたんですが、ちょっと男一人で行くにはおしゃれ過ぎて勇気がいるんですよね。」
「へぇ、気になるわねそのお店。――じゃ、今日は部下の言葉に甘えようかしら。」
「ええ、甘えて下さい!」
(なにやら良い雰囲気です。仲直りしたようで良かったです。)

その一週間後。桐壺は今井と青木が付き合い始めたことを知り、メンバーから〝キューピット〟と、もてはやされたのであった――。

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